「台風の前は魚がよく釣れるって本当?」
「台風が過ぎたあとはチャンスなの?」
釣り人なら一度は聞いたことがあるこの話。
実際、台風の前後は魚の活性が上がり、釣れやすくなる傾向があります。
しかし同時に、自然条件が最も厳しくなるタイミングでもあるため、安全対策は欠かせません。
この記事では、台風による魚の行動変化と、釣り人が知っておくべき安全のポイントをわかりやすく解説します。
台風前後はなぜ魚が釣れやすくなるのか?
1. 気圧の低下で魚の動きが活発に

台風が近づくと気圧が下がります。
魚は浮袋(うきぶくろ)という器官で体の浮力を調整しており、気圧の低下によって浮袋が膨らみ、泳ぎづらくなるため、魚は体を安定させようと頻繁に泳ぎ回るようになります。
このとき、エサへの反応も良くなる=釣れやすい状態になるわけです。
2. 水中の酸素量・濁りの変化もプラス要因

台風前後は風と波によって海水がかき混ぜられ、酸素が多く含まれるようになります。
さらに、雨で流れ込んだ濁り(プランクトンや微生物)によって魚の警戒心が薄れ、捕食行動が活発化することも。
特に台風の「接近前〜通過直後」は、ベイト(小魚)も動くため、大型魚のフィーディングタイム(捕食時間)になりやすいと言われます。
台風前後の魚たちはどう動く?釣れやすい魚・釣れにくい魚
▶ 釣れやすくなる魚

台風前後に活性が上がる魚には、以下のような種類が多く見られます。
- 青物(ブリ・ワラサ・サゴシなど):気圧変化とベイトの動きに敏感。台風前の荒れ始めに岸近くへ寄りやすい。
- スズキ(シーバス):濁りや風を利用して捕食するため、台風前後に最も釣果が伸びやすい魚。
- チヌ(クロダイ)・キビレ:濁りに強く、台風後の濁潮で荒食いする傾向。
- ヒラメ・マゴチ:底近くで荒れをやり過ごした後、台風明けに浅場へ上がって活発にエサを追う。
- ハタ類(キジハタ・オオモンハタなど):海底に潜んで台風をやり過ごし、通過後に一気に捕食行動に移る。
▶ 釣れにくくなる魚

一方、次のような魚は荒天を嫌う傾向があります。
- アジ・サバなどの小型回遊魚:波が高いと群れがバラけ、岸からの釣りでは狙いにくくなる。
- メバル・カサゴなどの根魚:海が大きく荒れている間は岩陰に潜り、ほとんど動かない。
- キスなどの砂浜系の魚:底荒れでエサが流されやすく、釣果が安定しにくい。
- タコ・イカ類(マダコ・アオリイカなど):台風による大雨で川から大量の真水が流れ込むと「水潮」が発生し、塩分濃度が下がることで極端に活性が落ちる。特に湾内や防波堤では釣果が一時的に激減することが多い。

👉 真水が混ざりやすい湾奥や河口付近ではタコ・イカ狙いは不向き。
塩分濃度が戻るまで数日〜1週間ほど様子を見るのが無難です。
台風前と台風後、それぞれの「食いの違い」

▶ 台風の前:嵐に備えて「たくわえ食い」
台風が近づくと、魚も本能的に荒天を察知します。
「これからしばらく餌が取れない」と感じるため、荒れに備えてエサを積極的に食べる=“たくわえ食い”をする魚が多くなります。
特に青物やスズキなどは、このタイミングで一気に捕食スイッチが入ることがあります。
👉 ただし、風が強くなり始めたら速やかに撤退を。安全を最優先にしましょう。
▶ 台風の後:空腹で「荒食い」モードに
海が荒れている最中、魚は揺れの少ない海底でじっとしています。
そのため、台風が過ぎて海が落ち着いたタイミングでは、空腹状態の魚が一気にエサを追い始めるのです。
これがいわゆる「台風後の荒食い」。
濁りがほどよく残るエリアでは、チヌやヒラメ、ハタ類などが高確率で釣れる好機になります。
一方で、河口域では雨による増水と泥水の流入で、流れが強く釣りにならないこともあります。
濁りが強すぎる場合は、少し沖寄りや湾外の落ち着いたエリアを選ぶのがおすすめです。
台風後の「釣果アップ」を狙うコツ

- 風裏になるポイントを選ぶ
風を背に受ける場所や、波が立ちにくい湾奥などが狙い目。 - 濁りの程度をチェックする
適度な濁り(薄茶色〜緑色)は好条件。濁りすぎは逆効果です。 - ベイトの動きを観察する
小魚が岸近くに見えるときは、大型魚が近くにいるサイン。 - ルアーやエサはアピール重視に
音や光で目立つルアー、匂いの強いエサが効果的です。 - 水潮の影響を考慮する
タコやイカなど塩分変化に敏感な魚種は、水潮が落ち着くまでは回避する判断も必要です。
命を守るためのチェックリスト

釣果アップよりもまず「安全第一」。
次の条件をひとつでも満たさない場合は、その日は釣行中止が正解です。
- ☑ 強風注意報・波浪注意報が出ている
- ☑ 波が堤防を越えて打ち上げている
- ☑ 普段濡れていない足場が濡れている
- ☑ 落石・漂流物が多い
- ☑ 同行者や周囲に人がいない
過去には台風接近中に釣行した釣り人が転落し、命を落とす事故も報告されています。
釣り人あるあるの「最後の一投」や、「自分は大丈夫」と思わず、自然には勝てないという意識を持つことが重要です。
まとめ:台風前後は確かに釣れる。でも「安全最優先」で。

台風前後の釣りは、
✅ 魚の活性が高く、釣果を上げやすい一方で、
⚠️ 強風・高波・地形変化による危険が常に隣り合わせです。
また、真水流入による水潮や泥濁りなど、魚の種類によっては「チャンス」より「休みどき」になることも。
「チャンスは無限。命は一つだけ。」
釣行を判断する際は、この言葉を忘れずに。
台風明けの静かな海で、安全に爆釣を期待して楽しみましょう。